2024.07 これまでとこれからー近況報告ー

ご無沙汰してしまいました。兒玉は近頃どうしているのか、そもそもどこにいるのか?と誰からも言われる毎日。それもそのはず、ほとんど発信できていないのです。福岡県内はもとより、広島、京都、東京とひっきりなしに移動して、元気に過ごしています。自身の環境も変わりつつあるいま、これまでとこれからを書き残すことにしました。

1.大学院と修論、最近の状況

私は今年の3月に、九州大学大学院芸術工学府未来共生デザインコース(芸工)を修了しました。大学院では情報編集デザインについて学んでいました。
それまで法政・関大で学んでいた地理学は自分の持つ道具や考え方の基盤としながら、より発信や表現について広く考えたく思って進学した芸工では、編集やプロジェクトマネジメントを学び実践する機会をいくつか持ち、また、グラフィックデザインや音環境、メディア考古学、建築思想、デザイン哲学など、それまで都市とともに関心を持っていたテーマを学ぶことができました。

大学は香山壽夫の設計でした。元、九州芸術工科大学です。

福岡暮らしも2年が経ち、当然この街は、自分にとってなくてはならない土地になっています。

関心の赴くままにあれこれ取り組みつつも、軸線にしていたのは、九州へ訪れる大きなきっかけでもあった「池島」をフィールドにした研究です。暮らしの場としてありつづけているさまをどう残していくかを考えました。題名は『地域・住民のあり方に応じた「土地の記憶」の収集整理と共有ー長崎 池島での実践ー』。この修論はもちろんですが、写真表現の地としても通い、卒論の場としても通ってきて、そして雑居雑感でも書いていて。行くたびに、島の状況も大きく変わっていきます。

夕刻の池島も美しいです。

研究は今後続けていくライフワークとなるでしょう。炭鉱や住宅、集落、政策といった既存の視点での調査だけでなく、より広域をみて西海地方の文化や、捕鯨・石炭をめぐる海洋文化のなかに位置付けながら調査を続けていきたいです。また、地域の方や行政との関わりのなかで、地域課題の把握や伴走にゆるやかに関わっていきたいと思っています。自分が行き関わることを、地域にとって、という目線で検証していきます。

今年から、佐世保の高速船が新造船になりました。試運転の様子。

2.これまでを整理する

大阪、福岡と引っ越してきて、また移動の範囲も頻度もずいぶん充実してきた近年、果たして自分はどこで何をしているのか、自分でもわからなくなることがあります。いい機会ですから、ここに活動記録としてまとめてみようとまずは思ったわけです。
兒玉真太郎としては、dokokaというウェブサイトを持ち始めた2019年から、趣味としての旅行や写真と研究的意識が結びついた形で、文章執筆や写真撮影、紙面デザイン、編集デザインで活動してきました。
調べ明らかにしたり記録したりという行動から、外部に向けて発信するという意味で表現や語り口にも意識を広げてきた数年です。

この数年、自分で企画したことと、参加させていただいたことを羅列してみると以下のようになります。

自主企画
2016- イベント「〇〇を歩く」@鎌倉・下総・団地・高宮・福岡
2018 イベント「55・58年館をアーカイブしよう」@法政大学55・58年館
2019 冊子「こだまするまち。Vol.1」
2019- ウェブサイト「dokoka 文化と街を紐解くメディア」
2020 出版物「dokoka vol.1 京都編」

共同企画・作品発表
2020 企画展「それぞれの時間 それぞれの東京展」@KS46Wall(東京)
2020 写真展「集い散ること」@KS46Wall(東京)
2020-2021 podcast「構想喫茶」@spotify,podcast,youtube,etc…
2022 展覧会「天神アートプロジェクト」@天神センタービル(福岡)
2024 展覧会「座れたことがある」@Artist Cafe Fukuoka(福岡)

参加企画
展覧会
2020-2021 展覧会「ARTS & ROUTES -あわいをたどる旅-」@秋田県立近代美術館(秋田)
2021 グループ展「Take it Out (ファストフードの見方)」@京都精華大学サテライトスペースDemachi(京都)

著者の一人として
2022 マガジン「meet-meat!」 @ヤマモトナツキ企画(秋田)
2022 MAGAZINE「等身大」内「大橋という街で」
2022- ZINE「空想と地図 #1,#3」@空想と地図の企画室
2023 同人誌「複 vol.1」(福岡)
2023 小雑誌「雑居雑感」3号 @弐拾db(にじゅう・でしべる)企画(尾道)

カメラマンとして
2020 「Mikiki タワーレコードの音楽ガイドメディア」内「【詩人・黒川隆介のアンサーポエム】特別編」
2020-2021 「近江ARS 百間サロン」「近江ARS 松岡正剛の近江視察」撮影編集
2021 「BOOK TOWN じんぼう」神保町書店リスト,書棚ギャラリー 撮影

そのほか
2022 慶應義塾大学文学部 藤井丈司氏 講義「現代芸術―ニューミュージック・シティポップ・j-pop 1970~2021」助手
2022-24 「株式会社リ・パブリック」 インターン

以下の図のように一旦まとめてみました。

自分の足で、手で、体で、フィールドに出て移動して、なにかを掴んでくるフィジカルな取り組みや技術と、そこにある全体の構造を掴んでいき、方向を示したりする取り組み、そして特別なことではなく、出会う人と実直に関わろうとする気持ち。これらを大切に生きていけたらと思っています。

福岡に引っ越してきて大学院を卒業して、いまありがたいことに地域文化や炭鉱、音楽、古材、メディアアートなどに触れ、その読み解きや発信に関わることができてきています。

3.今年4月からどうしているか

大学院を出て3ヶ月が経とうとしていますが、この間、アートの展覧会を行ったり、今後の生き方をひとまず決めたりと動いていました。

調査からデザインへ、使う言語やコミュニケーションの方法が広がってきたところでしたが、それまで鑑賞享受してきたアートや芸術にも、自分の身はいまあるのかもしれません。(もちろん、その区分は本質的に大きな意味を持ちませんし、連続的なものだと思います。)

DX7や鉄道、フュージョン、YMOといった興味は、構造主義・ポスト構造主義的思想の変遷、文化概念などと連続したものとして捉えることができるようになり、また芸術に関するムーブメントやコレクティブ、場づくりは、聞き書き、生活史、都市文化といった関心とも重なって、研究の対象となっていたところから、自らが身を投じるフィールドにもなってきたと言えます。

芸工に来てからは、表現や意図、様式について考え意見を交わす機会が増えました。一緒にプロジェクトで手を動かしたり、芸術祭を見に行って議論するなど共通体験が増えるなかで、自然とコレクティブが形成されました。5月に行った展覧会「座れたことがある」は、その集団の初めて展覧会でした。

福岡市とCCC(蔦屋書店)が運営する「Artist Cafe Fukuoka」が会場でした。

それぞれに表現手段を持つ4人で、共通の一つの物体(赤いエッグチェア)から作品を作るという取り組みに加えて、展覧会として成立させるために何をどうしたらいいのかを模索できたのがなによりよかったです。

展示の核心となった「赤いエッグチェア」は、自身が福岡で暮らしているなかで考えるテーマと切り離せない、重要なモチーフでした。

2023年11月15日にインスタのストーリーズに投稿したとき

天神ビッグバンのなかで解体されるビルからこのあと“救出”して、そこから議論を経て、あのアートの展覧会の核となったのでした。“脱皮する”都市のあいだで残ったひとかけらが、再びそれぞれに解釈され位置付けられていく過程とも言えて、それは”保存”とは違う形であり、取り組んでみたいことでもありました。

元々中学校の体育館だった場所が、ギャラリーになっています。

それぞれに意志を持ち、作家性や展覧会の方向性、作品のありかたを日々試行錯誤できるのは、とても嬉しいことです。コレクティブとしてのこれからにも、赤いエッグチェアのこれからにも、いろいろな展開があると思います。

4.これから

そうした変遷で、これからは自分で仕事を探す・つくることを決めました。

まずいまは、2年とちょっと居る福岡で、地域づくりとアートの境目にいながら、マネジメントやディレクションを任せてもらっているところです。
地域文化のリサーチ、電化製品の分解・再構築、メディア考古学的関心、異なる者どうしが巻き込まれる場づくり、を実践できる良い機会を持たせてもらっています。

コミュニティマネージャーとして、個人で活動しています。頑張らねば。


こうして過去・現在・未来の自分の取り組みは、その土地で生活する人たちの営みをつかみ、また背景にある構造を理解したうえで、その人にとって・地域にとって、を考え形にすることを意識してきました。そのなかで、人それぞれの言説に触れ、それぞれを大切にするとは何かを近頃は考えています。環境は少しずつ変遷してきましたが、通底する自分はいるはずです。

そういうわけでこれからは、

①ディレクションやアートマネジメントを通してプロジェクトの企画や指揮をとること
②既存の地域・文化の調査探究を通して各地の良さを見つけること
③コミュニティや集団でのコミュニケーションを重ね 良いと思えるものを表現すること

を、仕事でも生活でも体現していたいと思います。

異なる人どうしが集まるところで新しく生む・生まれることと、過去-現在の地域や空間にある文脈や意味を、積極的に読み解こうとするのは、得意なことです。その意味で新しいことができないかな、と思っています。

憧れの福岡で暮らしている時間を大切にしつつ、今後10月以降は、東京にも軸足を増やして?移して?活動していく予定です。
お声かけいただけますと嬉しいです。

このdokokaも、下書きが数十個たまってしまいました。再構築しながら、地域と文化を自身の視点から紐解いていこうと思います。どうぞこれからもよろしくお願いします。

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