今こそ旅に出ようよ-旅人は地元をどう見るか-

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いつのまにか2020年の年末。最近12月20日まで、柏の葉キャンパスにある蔦屋書店(T-site)で、ここにあった戦時中の飛行場にまつわる展示がやっておりました。

柏に陸軍の飛行場があった

簡単に説明すると、戦時中、米軍のB-29が首都圏を空襲するのを「手前で」防ぐために、柏に飛行場が置かれていました。1945年、ここではB-29の迎撃を目的に戦闘機「秋水(しゅうすい)」が開発されていたのですが、実戦投入されることなく終戦を迎えます。ロケットエンジンを搭載する予定だったということで、幻の戦闘機としても知られております。(すでに多くの方が書かれた通り)

2005年につくばエクスプレスが開業、柏の葉キャンパス駅という駅が置かれ現在に至るわけですが、マンションがあり大規模なショッピングセンターがあり大学や公園があり…というこの街は、その飛行場の跡地にできたものだったわけです。開発の過程で調査をしていると、秋水の燃料(劇薬の過酸化水素)を保管するための地下室が柏の葉周辺に出てきたりしています。

蔦屋で展示されたことの意義

周りの大人も、「なんかあの形不思議だな」とか思ったりしていたのかもしれませんが、それが戦時中の名残だと知っている人はほとんどいなかったし今もそれほど多くないと思います。

柏は戦後になって人が増えてできた街と言っても過言ではありません。それほど、移り住んできた人で成り立っていて、土地さえあれば今でも住宅地に変貌していきます。そのなかで直近のものが「柏の葉」と言えます。ですからなおさら、戦時中の遺構だと気づくことも少ないでしょう。その意味で、今回蔦屋書店の中で展示が行われたのは意味のあることだったと言えます。

生活のそばにそれがあると気づいたとき

私も、15年ほどまえにこの柏という街の住民となった1人です。その燃料庫は私にとって、物心ついたときから身近で不思議なものでした。その周辺を秘密基地とか言って遊んだりしたのも事実。中学生になったときインターネットを使って調べたことで、それが「燃料庫」であるとわかったんですね。

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あまりに不気味ですからね。

旅行好きの私は高校生大学生になり、紆余曲折ありますがここ数年で地元への興味を失いつつありました。地元より旅先の方が、自分にとって知らない場所ですから、自分にとって未知のものは無邪気に興奮しますよね。

そうして今年の春頃、まだ今以上に正体のつかめていなかった新型コロナが流行り始め、3月ごろから7月ごろまで、ほとんど家から出ない日々を過ごすことになりました。大学も授業がzoomに切り替わりましたし。これまで暇さえあれば激安高速バスで旅行に行っていたことを知る友人たちからは、突然家にこもるようになった私を「生きているのか」と思われることもありましたが、当の本人にはそれほど辛いものではありませんでした。

「観光と消費」と一段違う段階に

その期間家ではこれまで旅先で撮った写真やメモをまとめたりしていたわけですが、常に気になっていたのは、自分の振る舞いは社会的にはどう解釈できるんだろうということでした。

自分の旅行は、既知のものの確認作業や消費で終わっていないだろうか。もちろんそれで終わることも、観光では必要かもしれないけれど、自分にとっての旅行の目的はそれじゃないなという曖昧な感覚がありました。

「なぜ兒玉くんは旅行をするの?」

そう聞かれても的確に答えられていないのが、大学生になってからのここ2,3年です。大抵いつも旅先で人と話して連絡先を交換するし、旅行の大半は、その人に会いにいくことが目的だったりしているので、いわゆる観光は二の次なわけです。そういう旅行スタイルだから、最近は聞かれれば「あなたの生活圏を旅行します」と答えるようにしています(怖い…?)。そうした悩みを考えているこの期間、ふと、家のそばにあった秋水の燃料庫と飛行場の存在を久々に思い出しました。

一番身近な環境、つまり自分の生活環境を旅してみることにしたわけです。未知のものや距離があるものは旅先にできるんじゃないかという仮説を立てました。(その詳しい解説はこちらの記事に書きました。

「必ずしも、歩き、鉄道やバス、車、飛行機やフェリーを使って移動することだけが旅行じゃないんじゃないか?」という疑問がまずあります。

家のそばでも「そういえば通ったことなかったな」という道があったりしませんか。旅行のワクワク感と似たものを感じることがあります。

私なりにどんな旅ができるかなと考えを巡らせてみると…大学の授業で扱っていたことも手繰り寄せると応用できるかもなーと考えみます。今回は、地形と地名の由来・その土地にまつわる伝説を“移動の手段”にしてみるのが良さそうです。

そうして作ったのが以下のガイドブックです。

(秋田公立美術大学主催の「旅する地域考」という企画に参加させていただき制作する機会をいただきました。秋田県立近代美術館で行われている企画展「ARTS & ROUTESあわいをたどる旅」にて展示していただいています。)

地形から旅をしよう

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ここで重要視していたのは距離の捉え方です。次の記事で、地平線の話とともにご紹介します。

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